地域×モビリティの現状をまとめてみる ~ 背景 ~

にしあわくらモビリティプロジェクト代表の猪田です。2018年4月から夫婦で岡山県西粟倉村に移住して、地域起こし協力隊として活動しています。

西粟倉村という岡山県の北東部、右手で手のひらを上にしてげんこつを作った時、それを岡山県全図と見立てると、親指の第一関節が曲がったところ、ちょうどそこが西粟倉村です。

人口は1,450人(2019年10月1日現在)、全国で183ある村の一つです。
路線バスが走っていない、タクシー事業者が村にはない、と、ないない尽くしの村。

村内にあるのは、智頭急行の駅が二つと、姫路と鳥取を結ぶ高速バスの停留所が、公共交通機関が使えるすべての接点です。

どうしてマイカーを持たずに移住したのか

もともと地域でモビリティでビジネスを考えたいという思いがありました。新しい技術の活用もある、シェアリングを活用した乗合ビジネスもある、既存の鉄道やバスと連携したビジネスも考えられる。そんなことをワンストップで考えるビジネスモデルを漠然と考えていました。

そんな中、西粟倉村において、この活動自体がひとつの社会実験として認められました。

そこで、地域おこし協力隊として移住して、マイカー以外の選択肢を中心に検討するために、夫婦揃ってマイカーを持たずに移住しました。

ここ数年で「便利」になった西粟倉村

西粟倉の地理的ポテンシャルの高さを感じたことも、移住して地域モビリティを考えようと思ったきっかけの一つです。

「羽田空港から村内まで公共交通を乗り継いで最速2時間56分」

村外で言うと最初は誰も信じてもらえないのですが、これが実体です。

公共交通機関としては、黒字第三セクター鉄道の雄、智頭急行線が走っています。ほぼ1時間に1本特急が走っていて、美作市の大原駅に止まります。

村内に駅が2つあり、1日12往復の各駅停車が止まり、高速バスは姫路行きと鳥取行きがそれぞれ1日4本ずつあります。
兵庫県の佐用から鳥取県まで無料の鳥取自動車道が、平成25年に村内を通ることとなり全通しています。

鳥取駅までは50分、お隣の兵庫県佐用町までは20分、大阪の吹田ICまでなら1時間40分、京都の大山崎JCTあたりでちょうど2時間。

東京にいた時代、全国に出張をしていて、高規格幹線道路や地方空港のありがたみを存分に知っていたので、この便利さ・地理的ポジショニングに惚れた、というのが移住を後押ししたと言っても過言ではありません。

クルマなしで公共交通をどう使いこなしているのか

家を西粟倉駅からも高速バス停からも歩いて10分ほどのところに借りられました。シェアオフィスは、家から4kmほど離れた場所に。

私の全移動は以下のようになります。

村内の移動:基本自転車(ときどき鉄道)、最悪徒歩

隣町への移動:基本自転車(大原駅まで片道15分、ただし夜は真っ暗)

遠方への移動:智頭急行か高速バス、もしくはレンタカーを事前に準備

興味を持ってる「移動」とは

村内には、商店が2つだけ、金融機関は郵便局とJAのATM、一番近いコンビニが自転車で15分の隣街なので、「村から、いかに村外の目的地に快適に行けるようにするのか」ということに最も興味関心があります。

兵庫県の佐用町か、鳥取県の智頭町に行かないと、総合スーパーやドラッグストアはありません。

村内には飲食施設もほとんどないので、外食をするにしても村外に行かないといけないのです。

ただ、クルマで1時間走れば、鳥取市に行けるので、何でもあるといえば何でもあります。

マイカーがあればそれほど不自由を感じない生活ができます。

実は「地域にモビリティの課題はない」のでは?

マイカーは、本当に便利です。

まず天気に関係なく同じ条件で移動できる。

自転車だとそうはいきません。

特に西粟倉は山の気候なので、急に雨が降ったり強風になったりします。また、夜の移動も自転車だと大変です。

このようにマイカーの中の環境は、まさに「都会と同じ」快適性。

クルマが運転できる状態であれば、地方に住むハンディは相当軽減されます。

不便な鉄道やバスに乗る必要はないのです。

マイカーを持っていてクルマの運転ができる人であれば、地域にモビリティの課題はない、といえます。

あなたがクルマを運転できない状況を想像できますか

前述のように、マイカーを乗り回すことができる人にとって、地域において、モビリティに関する問題はありません。

ただ、クルマを運転できないとき、地域のモビリティは途端に課題だらけになってしまいます。

たとえば高熱が出て、運転できないけれども病院に行きたいとき。

腕を骨折してしまって、ハンドルが握れないとき。

そんなことが全くないとは言えません。

子どもや高齢者から目が離せない時は、高速道路を走っていても気が気じゃない。

クルマを運転できなくなることは、誰しもあり得ることのはずです。

高齢になって判断能力が低下し、免許を返納せざるを得ないことも考えられます。

急に体に障害がでたり、難病になることも考えられる。

精神的に不安定になることだって普通にあります。

クルマを運転したくてもできない状況は誰の身にも降りかかる可能性があるのです。

こんな時に、公共交通機関が整備されていないと、簡単に『移動困難者』になってしまいます。そして、それにみんなが気づかないといけないのです。

データと実例から、リアルに考えるきっかけになればいい。「ローカル・モビリティ白書」を作ります。

夫婦二人でマイカーを持たず、地域おこし協力隊の活動そのものを「生きた社会実験」として行いローカル・モビリティ・プロデューサーを目指す地域おこし協力隊員猪田有弥(専門社会調査士) が、交通事業・地域福祉・技術革新・地方創生・安全な暮らし・観光振興等の観点から、既存の各種調査や社会実験等を網羅する形で執筆、編集した、すぐに参考にできるデータアーカイブ型の白書を作成し、地域の足を守れるような活動をともに考えます。

 白書の想定ターゲットはこんな人です。

・現在の交通・モビリティに関する概況を掴みたい人

・地域でどんな実証実験がやられているかを網羅的に知りたい人

・今後交通に関する新技術がどのように進展するか気になる人

・交通・モビリティ市場の今後の動きが気になる人

・MaaSのこれまでと今後を幅広く知りたい人

・公共交通担当になったが何から手を付けてよいかわからない自治体職員

・高齢者の足や免許返納が気になっているが相談先が分からない家族や福祉事業者

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